撚糸・・・撚り方(回数)による違い

 撚糸・・・撚り方(回数)による違い
以前、撚糸とは?という記事で、撚糸がどういうものかについて触れました。

撚糸には、「撚り方の方向」と「撚り方の強さ(回数)」による違いがあります。

今回は、撚り方の強さ(回数)について触れていきたいと思います。


撚糸は、単位長さ(1mやインチ)あたりの撚りの回数によって、糸の硬さや風合い、強度が大きく変わります。

1.撚糸の回数による種類



1-1.無撚糸(ほとんど撚りがない)



ほとんど撚りがない無撚糸は、非常に柔らかくてふっくらとした肌触りの良さが特徴で、タオルや肌着などに主に使われます。

肌触りがよいものの、毛羽立ちやすいというデメリットもあります。


1-2.甘依り糸(撚りが少ない 500T/m以下)



柔らかくボリューム感があり、空気を多く含むため保温性があり、ニット・毛布・タオルなどに使用されます。

しかしながら依りが少ない分、強度は弱めというデメリットがあります。


1-3.中撚糸(標準的な撚り回数 500~1,000T/m)



バランスがよい分、強度と風合いは一般的で、一般的な織物用の糸やミシン糸として使用されます。


1-4.強撚糸(撚りが多い 1,000T/m以上)



硬くシャリ感があり、毛羽立ちが少ない特徴があります。

撚りの回数が多いことによって、速乾性や接触冷感を得ることができます。

また、シワになりにくい特徴を利用して、夏物衣料(ちりめん・クレープ記事・ウールスーツなど)に使用されます。



これらの特徴から、撚りが弱いほど柔らかく、ふんわりとした肌触りで、空気を含みやすいため保温性が上がります。

そして、撚りが強いほど硬くハリ・コシが出てシャリ感があり、毛羽立ちにくく、強度も上がり、ドレープ性に優れると言えます。


2.強撚糸の接触冷感の要因



接触冷感とは、肌が生地に触れた瞬間に熱が生地へ素早く移動することで、肌の温度が下がり「ひんやり」感じる現象を言いますが、

強撚糸にはどうして接触冷感機能があるのでしょうか?


2-1.空気層の減少



糸を強く撚ることで、繊維同士の間にあった隙間が減り、糸の密度が高くなります。

そのため、繊維の間に空気を多く含む「空気層」が減るため熱を溜めにくくなります。

結果として、糸や生地の熱伝導率(熱の伝わりやすさ)が上がり、肌の熱が生地に触れた瞬間にスムーズかつ迅速に移動する、熱移動の早さがひんやり感の正体になります。


2-2.肌との接触面積の減少(シャリ感)



糸を強く撚ることで糸が硬くなり、生地の表面に凹凸が生まれます。

この凹凸があることで、接触面積が少なくなります。

結果として、肌と生地の間に風が通りやすくなるため、汗をかいても張り付きにくく清涼感を感じられるようになります。


2-3.気化熱の促進



撚りが強いため、繊維管の水分の通り道が細かくなり、吸水性と速乾性が高まります。

また、汗を素早く吸い取り蒸発させる際に肌から熱を奪う「気化熱」による冷却効果が高まることで、持続的な涼しさにつながります。


以上のことから、強撚糸は、空気層を減らすことで、熱を素早く逃す(熱伝導率のが高い)ことで接触冷感を発揮すると言えます。


撚り方は、生地の肌触りや機能性に大きく影響を与えますので、用途によって上手く使い分けることで、快適さが得られます。

小さな知識としてお役立て頂けますと幸いです。